I
正体不明だった
突然現れた
彼が"線"を生み出した
いや、正しくは
"知らしめた"。
人は形容し難い物事に
名前を付けて無理矢理に納得する
納得しないといけない
"線"も元々はそうだった
面と面の接する境界
点と点の密集
その曖昧な意識の中で
"線"は生まれた
光の具合、角度、物質、
様々な条件によって変化するそれは
人間の理解できる範囲を超えていた
彼は初めから存在したが
"線"と名付けられたことで
ようやく人間の意識に入り込んだ
正義でも悪でもない
"無意識"に寄生した
この世の"bug"である。